【ネット小説】ゾンビの王に俺はなる!|序章【ゾンビ思う故にゾンビあり】第3話 ゾンビではオレはない
第3話 ゾンビではオレはない
おhelp me!!
瓦礫の下から現れた数体の人影…
それから発せられる殺気は、先程の女性から発せられていたものと同種…
つまり、彼らはキミタカを『獲物』として認識しているだろう事は明らかだった…
眼鏡のレンズを挟みキョロキョロと眼球を動かすと、視界に少なくとも彼らを5体確認できた…
男性が3体、女性が2体…
皆、身体に噛みちぎられたような傷や骨折の様子が見受けられ、腕や脚の欠損も見られる…
とても生きた人間のようには思えない…
この特徴は明らかにビーゾン…つまりゾンビのそれでっさ!
こんなもん、すぐわかったでっさ!
キミタカは図らずも自分の思考がミルクボーイっぽくなった事を自覚しながら、先程の女性の特徴も含め、彼らがビーゾンつまりゾンビであると認識する。
しかし、ビーゾンつまりゾンビなどこの世に実在するものなのかでっさ…?
しかし、明らかにビーゾンつまりゾンビの特徴を示す存在が複数出現しているのだから、そんな疑問に意味などない。
幸い、先程からわけもわからず全身に漲る『得体の知れない力』はまだ失われていない…
この数ならば先程の女性のようになんとか撃退する事は可能ではないかと思ったキミタカは、今までの人生で本気で構えた記憶はないファイティングポーズをとる…
フッ、ファイティングポーズなど、中学時代、飼い猫にちょっかいを出していた時に飼い猫が突然ブチ切れてオレの手を引っ掻いた時に反撃しようと構えた時以来の事でっさ…
キミタカは覚悟を決めた!
『さあ、かかって来いビーゾン共!貴様らのごとき死に損ないに遅れをとるオレではないでっさ!』
キミタカがそう叫んだ瞬間!
ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ…
キミタカの声に反応したように、瓦礫の下から更に数倍のゾンビがゆっくりと姿を現す!
その数はざっと20を下らない!
『えっ?あっ?えっ?』
キミタカは自らの行為を激しく後悔した!
『ふ、ふふふ伏兵とはちょこざい極まりないでっさ!それはアカンでっさ!反則行為も甚だしいでっさ!』
キミタカのファイティングポーズは数に気押されて緩み、ゾンビの群れはじりじりと包囲を狭めてくる。
最早生き残る術は逃走のみと方針を切り替えたキミタカは必死に眼球を動かし逃走経路を探すが、数が多すぎてそれを見出せない!
ヤバイヤバイヤバイ、意識が飛んでしまいそうでっさ…
キミタカがまたあの癖を発症しそうになった瞬間…
『hey!そこの眼鏡の人!今助けたるからしっかりせえよ!』
突然、ゾンビの包囲網の外側から男の叫ぶ声が聞こえた。
明らかに自分と同じ、生きた人間の声である!
キミタカはその声に応えた!
『help!おhelp meでっさ!どこのどなたか知らないが、hurry、hurry upでっさ!!』
またキミタカの叫びに応えるように、外側から複数の声が聞こえた!
『ケンジさん、お願いします!』
『よっしゃ〜!任せてとけ〜!!』
ドゥルルン!ドゥルルン!
ドッドッドッドッド…!!
突然、エンジン音が響き、更にまた野性味溢るる男の雄叫びが響き渡る!!
『ハッハー!!おのれ等ぁ、一匹残らず伐採じゃあ〜!!!ウワハハハハ〜!!』
キミタカはゾンビ包囲網の隙間から数人の男性の姿を確認した。
その中から、おそらくケンジと呼ばれているらしい坊主頭の筋肉質の男が嬉々とした様子で前に踊りでて、エンジン式チェーンソーを掲げるとまるで悪魔のような形相で高笑いしながら『伐採』を開始する!
あるゾンビは縦に、あるゾンビは横に、凄まじい早さで『伐採』されていく…
キミタカの視界はどす黒い血煙にまみれ、エンジン音と肉と骨が切り飛ばされいく音だけが聞こえた…