醒めない悪夢
『うわあああ〜!!あんまりでっさ〜!!』
鉛色で赤みがかったような曇天の空にキミタカの悲鳴が響き渡る。
どこともわからぬ灼熱の砂漠でポコ壱番屋のBOX席にて受け入れ難い悲劇の渦中にあったはずのキミタカは今、どこともわからぬ場所で仰向けに空を見ている…
『?????』
激しく困惑しながら異様な色の空を見つめていると、キミタカは段々と状況を理解し始める…
『ドリーム…つまり、オレは夢を見ていたのだな…』
何年も何年も追い続けてきたカレーが腐っていたと言う現実に傷ついた心の整理はつかないが、あれが『夢』だったと言う事は理解した…
しかし、今自分は何故空を見上げているのか?
それを知るには起き上がり、周囲を確認する必要がある。
しかし、物凄い倦怠感だ…
まるで高熱で何日も寝込んでいた後のような体力の消耗を感じる…
キミタカは倦怠感と戦いながら、ゆっくりと身体を起こすと、周囲を確認する…
『は、はうっ!!?』
起き抜けにあり得ぬ状況を目にした時、人間は一瞬息が詰まるものだ。
キミタカの視界には、その、あり得ぬ光景があった。
まるで爆撃にでもあったような、徹底的に破壊された街の風景…
また周辺のそこここに、火災の後も見受けられる…
キミタカはにわかに理解し得ぬ状況の答えを見出す為に静かに目を閉じ、記憶を辿る…
答えが出るのにそう長くはかからなかった。
地震、である。
ポコ壱番屋でカレーをテイクアウトしようとしたが、財布を忘れてしまい、そこにモゲが現れ、店員とよってたかって自分を変質者に仕立て上げようとしていた…
その状況の中、すぐそばに落雷があったような轟音と振動がきて…
そこから記憶がない…
状況から見るに、やはり今まで経験した事のない未曾有の大地震が発生し、街はこの有様に変貌した…
まさか家を出る時に、目をやったテレビで流れていたニュースの南海トラフ地震が本当にきてしまったのだろうか?
現状、真実を確かめようもないので今はそうだと結論して落ち着くより他にない…
そして、真実を明らかにするには誰かに尋ねるのが一番の方法であろう…
見渡しても周囲には人影もその気配すら無い…
キミタカは倦怠感を引きずりながら立ち上がると、人間を求めて歩き始めた…
今、目に映る景色もまた悪夢である事を祈りながら…