【鬼滅の刃178話考察】黒死牟と縁壱の関係と笛について|笛は絆
笛は絆
厳勝は天才である弟に歪んだ劣等感と恐怖心を抱いていたようですが、おそらくそんな自分を嫌悪していたのではないかと思われます。
厳勝は、基本的に自分と他者を比べる事でしか自分の価値を見出せないタイプの人間だったのでしょう。
また、その比べる相手は一生精進を重ねたとて追い抜くどころか追いつく事もできぬような天才。
縁壱の前では、自分には何の価値もない、そう思えてしまったのでしょう。
厳勝は縁壱を太陽だと表現していますが、縁壱からすれば厳勝こそが自分を照らしてくれた太陽であったのではないか?
幼少のみぎり、忍んで遊びに来てくれた兄は押し込められた何もない暗い三畳間を照らす太陽のように縁壱には感じられたのだと甲塚には思えます。
縁壱にとって、兄と離れていた年月、兄の代わりであるこの笛こそ心を照らす太陽であったはず。
それ故に、縁壱は外れた音しか鳴らぬその太陽を、肌身離さず大事に持ち続けていたのでしょう。
鬼となった厳勝と対峙した年老いた縁壱は厳勝をして『勝ち逃げ』と表現すること一撃を繰り出して絶命しましたが、80を超えて尚、兄から与えられた『太陽』たる笛を肌身離さず大事に持ち続けていた…
黒死牟の涙は明らかに敗北と惨めさからのものではなく、弟が未だにあの笛を持ち続けていた事に対しての感動でしょう。
妬み、嫉み、憎み続けてきた弟…
そんな自分の歪んだ感情を全て理解しながらも…
ましてや鬼になってしまった自分を…
それでも兄と呼び、慕ってくれていた…
あの涙はそんな複雑な感情が爆発して溢れ出したものであると甲塚には思えました。
また、178話ラスト、黒死牟は塵となって消え去りましたが、そこに残れされていたのは『外れた音しか鳴らないガラクタの笛』でした…
思考や感情、人間と鬼、天才と凡人…
その全てを越えたところにある誰も説明がつけられない理屈で測れない継国兄弟の悲しいまでに強い『絆』…
それを現したのが、あの笛だったのだと、甲塚には感じられます。