カスパーハウザーの謎|異能者
異能者
法学者、神学者、教育者など、カスパーに興味を抱いた学者達が彼に様々な検査や教育を試みました。
宗教哲学者ダウマーはカスパーにある程度の読み書きを習得させる事に成功しましたが、『神』という概念を理解させる事だけは最後まで叶わなかったそうです。
彼の養育者であった法学者フォイエルバッハによれば、カスパーは水とパン以外の食物を受け付けず、鏡に映った自分の姿を捕まえようとするなど、人間として身についているべき教養や常識が欠落していた。
フォイエルバッハは、彼がかなりの長期間、閉ざされた空間で孤独な生活を強いられたのではないかと推測したが、それは正解で、後にカスパー本人が
『牢獄のような小さな部屋で、馬のオモチャだけを与えられて、何年もそこで過ごした』
と語っていた。
おそらく、かなり幼少からそこで生活し、他人と接触する事がほぼなかったのではないでしょうか?
しかし、彼の食事や身の回りの世話をする人間は必ずいたはずで、その人物かそれに連なる人物がカスパーが携えていた手紙を書いたのでしょう。
カスパーは発見当初、感覚が麻痺しているように見えたそうですから、おそらく他者とのコミュニケーションを取る方法すら忘れてしまうほどの状況下にあったのでしょうね。
しかし、彼は教育を受けたり、他人とコミュニケーションを取る事により、様々な事を、まるで思い出すように吸収していったそうです。
そんな中、カスパーが常人離れした超感覚の持ち主である事が判明していきます。
カスパーは、暗闇の中で聖書を読んだり、色彩の判別をする事が可能であり、金属を握っただけでその材質を言い当てたり、また、遠く離れた蜘蛛の巣に獲物がかかっている事を知覚できたりしたそうです。
これにはおそらく密室で他人とのコミュニケーションに乏しい生活を送ってきた事が大きく関係していると考えられます。
どんなに幼くても、どんなに劣悪な環境にあろうとも、人間は『思う事』だけはできます。
その行為がカスパーの感性を磨き、また、『常識』という、ある意味『限界』とも呼べる概念を持たないが故に、我々人間が無意識に制御している感覚を制御する事がなかった。
つまり、人間は本来カスパーと同程度の感覚の鋭さを持っており、カスパーはただそのリミッター自体が無かっただけかも知れません。
事実、彼は教養や常識を身につけるにつれて、そういう超感覚を無くしていったそうですから。