ほんとにあった怖い話2019感想に考察②|汲怨のまなざし
汲怨のまなざし
ほん怖では常連であるように感じられる佐藤健さん主演のセンチメンタル系エピソード。
結婚し、子供にも恵まれ温かい家庭で幸福な生活を送る佐藤さん。
しかし、何か異質な気配を周囲に感じはじめる。
それは見覚えのない女性が周囲にまとわりつく事として現実に現れる。
ある日、職場に女性が見知らぬ女性が自分を訪ねてくる。
その女性は、かつて佐藤さんが専門学校生だった時に同期だった女性の妹だった。
佐藤さんは現在周囲にまとわりつく女性が、その同期の女性である事を思い出す。
そこにいるのか、いないかさえわからないような目立たない女性だったが、その女性が自分に気があると噂されていた事も思いだす。
妹は、姉は最近亡くなったという。
佐藤さんは驚愕するが、妹が口にした女性が生前書き残していた日記の存在を知り、それを借り受けて目を通す。
女性は生前、佐藤さんに緩やかなストーキングをしていた模様。
また、日記のノートには大事そうに一本の手持ち花火が挟み込まれていた…
また、女性の霊は息子に影響を及ぼしはじめる。
佐藤さんは妻に状況を話すが、妻は佐藤さんがその女性に何か怨みを買うような事をしたのではないかと疑う。
しかし、佐藤さん自身は心当たりがなく、身に覚えもない。
そんなある日、家族で買い物中に息子がいなくなる。
息子は女性の霊に何処かに連れていかれそうになっていた。
何とか息子を取り戻した佐藤さん夫妻だったが、佐藤さんはついに女性の霊と直接対面する。
佐藤さんはその女性の霊に触れられ、そこから女性の霊の思念が流れこんできて、全てを知る事になる。
女性は佐藤さんを心底愛していた。
専門学校時代にみんなで花火をした際に、佐藤さんは一人で寂しそうにしている女性に一本の手持ち花火を手渡した。
女性はそれが嬉しくて嬉しくて、大事にして、あの日記に挟みこんでいたのだ。
ストーキングも悪意のあるものではなく、佐藤さんの幸福な姿を見て、その幸福を少しでも共有したかったのだ。
全てを知った佐藤さんは、それほどまでに自分を思い続けてくれた女性に対し、素直にありがとうと気持ちを伝える。
女性の霊は満たされたのか、それ以来現る事はなかったが、佐藤さんは終生女性の存在を忘れないことが供養になると信じて、忘れないことを心に誓っている…
というのが荒筋。
途中まで、女性は『呪怨』の佐伯伽倻子のような恐ろしい怨霊であるかのように描かれるが、全てを知れば何とも切ない思いがして胸がいっぱいになる。
女性の霊は、佐藤さんにとって何者にもなり得なかったという寂しさから死後に姿をあらわすようになったと思われるが、佐藤さんはキチンと女性の霊に向き合い、女性の深い愛に感謝で応えた。
女性は佐藤さんにとって何者かになり得たのだ。
佐藤さんとて、取り立てて優れた人間でもない自分を、深く、死後にまで想ってくれている存在があったというだけで自分をより一層大事にしていけるようになったのではないかとも思えます。
想いというものは、言動でしか相手に伝えることができない。
しかし、口にしたり行動に示すには、それに対するリスクもすくなからず存在するはずで、また得手不得手もあり、伝えるのは簡単ではないと思います。
甲塚は全てを知り、それを受け入れ、感謝を口にした佐藤さんの素直さと勇気は賞賛に値すると感じます。
どうしても切なさの残るエピソードでしたが、男女関係なく、想いを伝えるという面で考えると誰もが共感できるエピソードだったんじゃないかと甲塚は思いますな。